父の足。
【最近父が仕事前に飲んでいるミックスドリンクの中身】
私には73歳になる父がいます。
父は居酒屋店主。社長職こそ去年私に譲りましたが、今も板場を一人で切り盛りし、朝は仕入れ、午後は仕込み、夕方からは店の厨房で料理を作ります。
そして父はガン患者です。4年前に大腸がんが見つかり(切除)、次に肺がん(切除)、現在は肝臓がんがあり抗がん剤治療中(2年目)なのですが、この治療が始まってからずっと、
「足の裏が痺れて感覚がないから、うまく歩けない。」
「毎朝足がつって目が覚めてしまう。」
という悩みを抱えていました。
抗がん剤の副作用だと言う父に、
・マッサージ
・足を高くして寝る
・年寄りは脱水しがちだし水分を多めに摂取
などとアドバイスをしてみるものの、「お前は副作用のつらさを全然わかってない!!」と半ばキレ気味に言われるだけ。ずっと取り合ってもらえずにいましたが、去年から父の店で毎日一緒に働くようになったのをきっかけに、閉店後に私が足のマッサージをしてあげることにしました。
・・・とはいえ、閉店後といえばお互いお疲れで、早く帰りたい父に要らないと言われたり、私がすっかり忘れてしまったり、はたまた元社長の父親と現社長(ひよっこ)の娘が一筋縄で仲良く働けるわけもなく、お互いの関係が悪化してからは何ヶ月もマッサージ無しの時期を過ごしたりしていました。
発想の転換
ひとつ転機になったのは発想の転換、実施時間の変更でした。
お互い疲れ切ってしまう閉店後ではなく、その日店に着いてすぐ。仕込みを始める前に「5分だけ!」と宣言してマッサージをするようにしました。これで実施回数は激変。ほぼ全日実施になりました。
気づきを重ねる
全日実施出来るようになると、父の足に問題を見つけました。
” 薬の副作用ではなくて、この浮指のせいでうまく歩けないのでは?”
” そういえば、抗がん剤が何度変わっても足裏の痺れは治らないままだし、原因は他にあると考えるのが妥当なのでは?”
そう思って伝えても、まぁまた「お前は副作用のつらさをわかってない!」と恐い顔をされるだけなんですが、とにかくこの浮指改善のためのマッサージを日々続けていました。
あまり大きな改善は見られないまま、マッサージの5分間で父には「浮指は足裏の設地面積が減るせいで足が疲れやすくなる。」なんて話を何度も言い聞かせていたのですが、そこに次の気づきがやって来ました。
父の足の土踏まずが異常に高いのです。
いわゆる、ハイアーチでした。
偏平足と比べると害が少ない、むしろいいことといったイメージでいたのですが、よくよく調べてみるとハイアーチも身体にたくさんの問題を生むことが判明しました。
何より「浮指+ハイアーチ」で、父の足は「足指下と土踏まずの脇の細長い部分+踵」というなんとも心もとない小さな接地面でかろうじて地面をとらえていただけだとわかりました。
それに、指で父の土踏まずを押すと、浮いていた足の指がほんの少しだけど沈む(地面をとらえようとする)ことも。
全てが繋がっていく瞬間
父のハイアーチに気づいて数日後、自分のレッスンで参加者さん全員約10人分の足の裏をこっそりとチェックして確信を得た後、amazonで中敷きを注文しました。
届いてすぐに装着してみたものの、まだ土踏まずにしっかりと当たらないと言うので、さらに100均で買って来た土踏まず用低反発ジェルクッションを投入したのが先々週。最初は嫌がられながら始まったマッサージでしたが、仲違いで無実施の数ヶ月も超えて、長い長い1年でした。
好転反応
たくさんの気づきを越えてやっとたどり着いた、父専用ハイアーチ改善中敷きの装着翌日。会うなり父はむずかしい顔で、
「これはダメだよ、今朝は両方の足がいっぺんにつったんだ。すぐ外したい。」
こんな風に言って来ました。
正直私も驚きました、もちろんがっかりもしましたし。でもそうするしかないかとも。
ただ、一呼吸おいてひとつ質問してみました。
「それは大変だから無理する必要ないけど、でも何か・・・。例えばつる場所が変わったとか変化はない?」
「・・・ある。いつもはここ(膝下横外)がつるけど、今朝は両足ふくらはぎだった。」
(イエス!!!)
足裏全体で普通に歩くことが出来れば、疲れるのはそこ、ふくらはぎです。
インソールが父の歩き方を改善したとわかった瞬間でした。
「ふくらはぎが激しくつったのは好転反応だと思う。」と説明して、父納得の上中敷きはそのままにしてもらい、ようやく今日で10日ほどが経ったところです。
思考を止めるな。
ふくらはぎがつる好転反応は、まだ続いています。でも足の裏の痺れは少しずつ薄くなっていて改善が見られるんだそうです。足裏全体を使って歩けるようになったので、日々の一歩一歩がマッサージになり、血行が改善しているのではないかと思います。
仕込み前のマッサージは今も続けています。たった5分ですが、その日の確認事項や雑談、コミュニケーションタイムも兼ねて。
特に雑談では自分のレッスンでしているような身体の話をする時間を重ねて、父の考え方も少しずつ変わって来たようです。
「何を食べようが、運動しようがしまいが、タバコや酒をやめようが、別に何も変わらないよ。」
これは私も医者でもなければ研究者でもないのできちんと否定は出来ないけれど、ただここからハッキリわかるのは、こういうことを言う人は自分の身体の変化に気づかない・気づけない人だし、それはつまり気づきたくない人だと思う。
と、マッサージ中にこんな話をしても前のように怒られるようなこともなく、
「なるほどなー。」
みたいな【顔】をして笑って聞いてくれるようになりました。
「思考を止めるな。」は今年流行った映画のタイトルを真似たわけではなく、私が好きなおすもうさんが言っていた言葉ですが、今回のエントリーではマッサージの実施時間の変更・浮指・ハイアーチ・好転反応の気づきによって、思考が止まることなく今日ここまでたどり着いたという考えをDROPしてみました。
そして、
「いつまでヨガのレッスンなんてのを続けるつもりなんだ。(=店に集中しろ)」
と言っていた父が、やっと私のことをヨガの先生として認めてくれたような気がしていますし、なにより関係がよくなったことがこの1年で一番大きな変化でした。
今年もあと3営業日。
居酒屋がんばります。